――a-conができた経緯を教えてください。
入社して、最初の3年間は人事にいました。けっこう作業が多くて、社外の活動をするような余裕はほとんどありませんでしたが、ちょっとしたきっかけから話が動き始めました。
NGOでインターンをしていたとき、僕は「損保ジャパンCSOラーニング制度」を利用して奨学金をいただいていたのですが、その旧交を温めあうパーティが毎年あるのです。ある年僕が幹事になって、ちょっとした企画を考えました。「自分がやりたいこと」をまとめた紙を会場の壁に貼ります。興味がある人には自分の名前を書き込んでもらって、あとで貼った当人が書き込んでくれた人に連絡するという企画です。
そのとき、僕はソーシャルに興味がありましたから、「NPOとコミュニケーションがどうかかわれるのか」をテーマに勉強会、ゼミみたいなものをやりませんか? と呼び掛けました。そしたら、5、6人が集まってくれたんです。それがa-conのスタートになるのですね。
――a-conとはどういう意味なのですか?
a-conというのはaction unit for communicative NPOの略です。NPOには「自分たちはいいことをしているのだから、伝わるはずだ」っていう意識が強いんですよね。そういう意味でcommunicativeではない。そういうところに対して、僕らが実際に手を動かすことによって、いい方向で、もっと伝わるようにしたいなといった気持ちで名づけました。
――最初はどのような活動をしたのですか?
以前から懇意にしていただいていた「JUON(樹恩)NETWORK」というNPOの事務局長さんに「なにかやらせてください」とお願いして、a-conとして最初のサポートをしました。最初は「ウェブサイトをつくりたいんだ~」という感じでしたが、話を聞いていくうちに、「そもそも、JUONってなにを伝えたい団体なんだっけ?」という問いに直面したんです。JUONは設立してから20年ほどたったNPOで、その間に活動の内容も変遷してきています。ウェブサイトを制作するにしても、まずは団体の「顔」になる「ロゴ」をつくりなおすことで、あらためて「JUONがどのような団体でいたいのか」にということについてJUONの事務局とa-conのメンバーで議論を深めました。
JUONではいろいろな意思決定は理事会で決めることが多かったのですが、a-conのサポートでは、JUONのことをまったく知らない人も含め200人くらいの人たちに「どのロゴがJUONにあうと思いますか」と聞いてみたんです。そういうアンケートって、企業では普通にやりますが、NPOの世界では珍しかったので、「外からの視点を取り入れた」ということで話題になりました。
その後ウェブの制作もお手伝いしましたが、僕ら自身「外からの視点って役に立つんだな」という気づきを得たのがうれしかったですね。NPOの場合、一生懸命やっているのは事務局の人ですから、彼らの話を時間をかけてきちんと聞く必要があると思います。偉そうに「こうしたらいいんですよ」っていうことではなくて、じっくり話を聞いて、課題が浮き彫りになってくるのを待つ必要があります。そうなると、必然的に時間もかかるんですよね。