ゲストインタビュー

トップ > ゲストインタビュー > #009 菅谷亮介さん(前篇)
ゲストインタビュー#009 (前篇)

ゲストインタビュー#009(前篇)菅谷亮介さん very50は社会問題解決のための学校であり、コンサルティングファームでもある

アジアの新興国に起きる社会問題を、トレーニングを受けた日本人チームが現地に出向き解決を図るというユニークな取り組みを展開するNPO法人「very50」。代表理事の菅谷亮介さんに、学校でもありコンサルティングファームでもあるvery50の活動についてうかがいました。

“MBA的マーケティング発想”では解明できないことも多い

日本でもフェアトレード商品を目にする機会が増えてきましたが、「こんなの誰が使うの?」というようなものを見かけませんか?(笑)。それって、とても不幸なことですよね。そんな状況から抜け出すには、やはり商品の背景にある物語をしっかり伝える必要がありますし、イメージとして「かっこいい」、「おもしろい」と思ってもらえるような商品設計や仕掛け方をしなければ、アジアといえどもやっぱり商売は厳しい。お客さんが、「フェアトレードだから」とか 「かわいそうだから買います」いうことはまずないですからね。

Toheでは財布を5ドルで売っていますが、ベトナムでは非常に高い価格設定です。ハイエンドとまではいかないまでも、ミドルアッパーくらいの人たちをターゲットにしていますが、いわゆる“MBA的マーケティング発想”では限界があります。いわゆる3C分析や4P分析をしてみても、お客さんに「その値段なら他にも候補がたくさんある」などといわれてしまっては意味がありません。

Toheのスローガン“playful as a child”は、他にはない、唯一無二な価値を感じてもらいたいという思いの詰まった言葉です。商品を手にしてくれた人が、理屈じゃなくて、「なんかいいよね」、「かっこいい」といってくれるとか、目に見えない、心情的な部分を探っていく必要があるんです。

僕自身がもともと音楽の世界にいたこともあり、どちらかというと、右脳で考えて理屈や理論抜きで、「なんかいいよね」といった判断を好むという側面もあります。 この「なんかいいよね」という感情については、“MBA的マーケティング発想”では説明できなくていつも悩まされているのですが(笑)。まぁでも、分からないなりに徹底的に分析していこうと心掛けています。

いいにくいのですが、過疎や山間の地域といった、外の情報がなかなか入ってこないような環境でものづくりをしている場合、製品企画の発想が単純な場合が多い。例えば、「財布やバッグのような生活必需品をつくれば売れる。」という具合に、自分が見たり、経験した世界のなかだけでしか商品企画を考えていない。だから、どこでも売っていそうな財布やバッグなど凡庸な品ばかりをつくってしまう。そんな甘い考えでは商品は売れません。

very50では、そんな彼らに視野を広げていただくため、予算の関係で年に1名くらいですが、支援先のアジアの社会起業家を日本に招待し、売れているフェアトレード商品やエシカル商品を販売する店舗などを実際に見てもらったりしています。

  • MoGで考えた施策を実践
  • ToheのCEO NganとMoGとは別にミーティング

ベトナムの人びととのコミュニケーションを忘れてはいけない

社会的企業と一般企業とは、そもそも何が違うのかよく分からないですよね。僕は経営の考え方が違うのだと考えています。たとえば、一般企業では「だれの、どういう問題を、どうやって解決するのか」を考えるわけですが、社会的企業の場合はそれだけではなく、「どういった社会問題と対峙して、自分の利益を超えたところで社会に解決の仕組みをつくれるのか」ということも考えないといけない。ところが、実際に事業を始めてみると社会問題をきちんと伝えていくためのコミュニケーションを忘れがちになる。自分でも気づかないうちにお金儲けに走っていたり、ビジネスとコミュニケーションのバランスが非常に悪かったりという事例も多いのです。

例えばToheでは、当初は商品のメイン顧客を外国人に設定していました。外国人在住者はお金に余裕があるので、Toheのように少し高めの価格設定であっても買ってもらいやすい。しかし、本来は「障害児や孤児の置かれている現状や、クリエーティブ教育の重要性」を訴えるべき相手は、外国人ではなくベトナム人なのです。ベトナム人がToheの商品を買い求め、やがて人びとの意識が障害児の問題に向かうようになり、その結果、ベトナム政府も動き始め、福祉政策の改良につながったりするのが理想なんです。ですから、社会企業の顧客設定が「外国人」というのは本末転倒ではないかと思うんです。

「誰が買ってくれるかな?~きっと外国人が買ってくれる!」という視点になってしまうと、大事なことが抜け落ちてしまう。ベトナム人は、ベトナムの人びととのコミュニケーションを忘れてしまってはダメなのです。ベトナムに限らず、東南アジア各国における社会問題解決型プロダクトの多くが、ついつい外国人をターゲットにしてしまいがちになっていると僕は思っています。

実際のところ、「ローカルの人びとが本当に買わないのか」をちゃんとテストしてみたところ、社会起業家自身がビックリするくらいローカルの人びとが買ってくれて、新興国の所得も確実に増えていることが分かり、そうした事実を目の当たりにした経営者が、「じゃあ外国人じゃなくてローカルを顧客にするわ!」なんていうこともありました(笑)。

それって、大きな方向転換というか、もっと早めに気付いておくべきことです。やはりイメージだけで考えず、実際に試してみる。コミュニケーションをとることはとても重要ですよね。

 ですから、経営者の考えを見直すことや確かめることが、まずは一番大きなポイントです。「自分は、そもそも何がしたくて会社を起業したのか?」という根源的な問いを、何度も彼らに問いかけます。創業当時のミッションやビジョンを経営者自身に再認識させることがなにより重要です。モガーにも彼らが葛藤する姿をなるべくありのまま見せるようにしています。

先ほども触れましたが、MBA的手法というのは、ある程度の下地さえあれば誰でもできます。ロジカルシンキングは筋トレのようなもので、センスは必要と思いますが慣れれば誰にでもできます。しかし、いろいろな人のことを配慮する、環境問題に配慮する思考や姿勢は、知識だけ備えていても体現することはむずかしい。意図せず、自然に振る舞えるようになるためには、頑張っている人の背中を見ながら、「自分もそうなりたい」と願うことを通じて、長い時間をかけて醸成されていくものだと思うんです。

 ですから、モガーには、社会起業家や僕自身の葛藤も含めてどんどん見せるようにしています。10年後か20年後か分かりませんが、若かったモガーが、例えば大企業の部長さんとして何かの決定を下そうとするとき、いろいろなことに配慮できるリーダーになって欲しいと思っています。

プロフィール

菅谷亮介(すがやりょうすけ)

1979年生まれ、東京都出身。高校在学中に、某音楽レーベル主催のオーディションに合格。その後、大学時代を通じ、プロのキーボーディストとしてエンターテインメント業界に携わる。学業と音楽生活の一方、カンボジアを中心に世界の医療分野における国際協力を垣間見る。大学卒業後は音楽から離れ、自動車関連会社、コンサルティング会社を経て、2007年末からメキシコと米国の社会事業を取り扱う起業家のもとで実務を伴うビジネスプランナーとして修行。2008年6月より、日本と世界の問題を教育の力で解決する仕組みをつくるためにvery50を起ち上げ、世界中(主にアジア)でさまざまなプロジェクトを手掛ける。

・英国外務省British Council/Asia Climate change leader選出(2010年)
・インドネシア Binus University/Guest lecturer歴任(2011年)
・Hawaii Asia Pascific Association 日本代表選出(2012年 )

この記事へのコメント