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ゲストインタビュー#009 (前篇)

ゲストインタビュー#009(前篇)菅谷亮介さん very50は社会問題解決のための学校であり、コンサルティングファームでもある

アジアの新興国に起きる社会問題を、トレーニングを受けた日本人チームが現地に出向き解決を図るというユニークな取り組みを展開するNPO法人「very50」。代表理事の菅谷亮介さんに、学校でもありコンサルティングファームでもあるvery50の活動についてうかがいました。

アジアの新興国における社会問題を解決する

very50には大きな特徴が2つあります。1つは「アジア新興国の人びとが直面している問題の解決に、発案から実行まで取り組むことを通じて参加者の知識を実践力に変えることで個人の成長も育む」という学校的な側面。もう1つは「アジア新興国でビジネスの力で社会を変化させようとしている社会起業家を支援するコンサルティングファーム」という側面です。現在、very50では、アジアの新興国で社会問題を解決するMoG(Mission on The Ground)というプロジェクトを展開しています。MoGとは、日本国内で12人1組のコンサルティングチームを組織し、アジア新興国の社会起業家たちが抱えている経営課題の解決に挑戦していく教育プロジェクトです。まず、国内で2~3か月間かけて、講義やワークショップを行い、発想やアイデアを形にして実行する力をトレーニングします。

現地に入ってからは、起案したアイデアを現場に即して試行錯誤を重ねながら、企画から実践までの流れを具現化させていきます。MoGの参加者のことを「モガー」と呼んでいますが、モガーには学生や会社員、フリーランスの方もいますし、美大でデザインを学んだ方も結構多いですね。だいたい3割程度が社会人ですが、バングラデシュで実施したプロジェクトでは、企業から部署単位で参加されたといったようなケースもありました。また、日本を出てアジアで起業をめざす人やアジアでの就職を考えている人が、現地でマーケティングをしっかり経験しておきたいという狙いから参加する場合も多いです。

私たちは、人材育成の理念として「理想なヒトの3要素」を掲げており、事業を通じて「自立した、優しい、挑戦者」を育てていきたいと思っています。「自立」は、世界のどこに行っても自活できるタフさやスキルを持つことを意味し、「優しい」は、人びとの生活・文化を守りたいと思う優しさや地球環境への優しさなどに配慮ができることを意味します。

昨今よく耳にする「グローバル人材」は、世界のビジネスシーンで通用することを意味していると思いますが、今後はそれだけでは不十分だと思っています。ビジネスを創り出す一方で、知らないうちに世界の誰かを傷つけていたり、大きな環境汚染を引き起こしてしまっているかもしれないからです。世界のビジネスシーンで活躍できるのはもちろん大切ですが、同時に、他人のことや社会のこと、環境問題に気を配れる人材こそが今後必要となってきます。古いやり方では解決できなくなった問題に対して、常に新しくイノベーティブな発想で問題解決に挑める挑戦者こそが、今日を昨日より良い世界に変えていくことができるのだと信じています。

障害児や孤児たちが描いた絵を商品化する

ベトナムのハノイに、「Tohe(トーヘ)」という、ベトナムのトップクリエーターが奥様と2人で創業した子どもたちの絵を使った雑貨を販売している会社があります。もともと、彼らはBMWやコカ・コーラのCMなど商業的な仕事を手掛けてきたのですが、夫婦でスペインを旅行した際、ピカソが遺した「ラファエロのような絵を描くには4年かかったが、子どものように描くには一生かかった」という言葉に心を打たれ、以来、子どもたちのクリエイティビティを大切にする活動を始め、なかでも障害児や孤児に光を当てました。

ベトナムでは、障害を持った子どもが生まれると、親が家から外に出さずに隠してしまうか、施設に入れてしまうことが多いため、街中で障害児を目にする機会はほとんどありません。施設に入った障害児は、18歳になると、極度に不自由でなければ施設を出なければなりません。しかし、ずっと外に出ることもなく施設で過ごしてきたわけですから、社会に出ても働き口などありません。

そんな子どもたちが絵を描くことができたら、イラストレーターなどのクリエイティブな職に就けるかもしれない。そんな想いから、出張授業のような形のクリエーティブ・ワークショップを全国の障害児施設で始め、いまでは、子どもたちが描いた絵をあしらったバッグや財布、エプロン、スリッパなどを制作・販売しています。

一般的なベトナム雑貨に比べて子どもたちが描いた絵を使った商品は「目立つ」のですが、品質がきちんと定まっていなかったり、ターゲットの選定に問題があったりで優位性を発揮できずにいた状況でしたので、私たちはToheを支援先とすることに決めました。

Toheのプロダクト

Toheでのアートワーク

とことんミッションやビジョンを追求していく

ToheとMoGのプロジェクトは2013年5月にスタートしました。

まず、日本で12人1組のチームを組んで、さまざまなビジネストレーニングをします。発想の技術やマーケティング、販売戦略など、多岐に渡るトレーニングを重ねます。その一方で、各チームは授業で学んだスキルをもとにベトナム国内における競合分析や市場調査を徹底的に行い、仮説を立てて解決策をつくりあげます。

現地に入ってからは、実際に経営者の方と一緒にプロジェクトを実行するので、日本で想定していなかったような突発的な出来事が起こります。若者だけのチームではプロジェクトが立ち行かなくなることも十分考えられるので、経営コンサルティング業に従事していた経験を持つvery50のプロスタッフが同行します。

課題解決の方法はケース・バイ・ケースですが、very50独自のコンサルティング手法といいますか、通常のコンサルティングファームではなかなかやらない、経営者の「創業当時の思い」にも踏み込みます。「どうしてこの会社をつくったのか?」「何を実現させたいのか?」など、何度もしつこいくらい問いかけます。ときには経営者が激怒したり、涙するようなこともあります。そうした、経営者自身も忘れているような原点を共有しながらに返ってミッションメイキング、ビジョンメイキングを、2日間ほどたっぷり時間をかけてやります。

私たちは、Toheのすべての商品を、「デザイン」と「機能」、「商品の背後にあるストーリー」、そして「Toheのスローガンである“playful as a child(子どものように遊べているか)”」の4つの要素に分解しました。そして、「これはおもしろい」、「これは売れていないけれども、どこかを変えたらおもしろいかもしれない」、「これは売れているけどToheらしくない」という具合に、一つひとつ分類しました。

また、私たちは、日本からのベトナム駐在員の奥様たちにお願いしてフォーカスグループインタビューを実施しました。Toheは、ベトナム国内だけでなく海外のマーケットも重視しており、なかでも日本人在住者、その先に日本を大きなターゲットと考えていました。お話しを聞いていて、おもしろいことが浮かび上がりました。それは、欧米人は子どもたちが描いた「顔のデザイン」を好む傾向にあるのですが、日本人の場合、人の顔よりも、傘だけ、あるいは太陽だけとか、地味でシンプルな絵が好まれることなどです。

  • MoGの参加チーム
  • フォーカスグループインタビューの様子
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