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ゲストインタビュー#008 (前篇)

ゲストインタビュー#008(前篇)赤羽真紀子さん CSRへの取り組みがリスクを減らし機会を増やす。

持続的な社会の発展に貢献するというCSRの考え方はあらゆる企業活動にとって不可欠なものとなっていますが、CSRの本質についての理解はまだまだ足りないようです。CSRアジア日本代表の赤羽さんにCSRの本質や取り組みの現状についてうかがいました。

日本企業によるCSRの特徴は?

日本企業によるCSRに対する取り組みについて、まず、環境対応の技術は世界一だと思います。二酸化炭素の排出量を下げる、あるいは、一度利用した水を、金魚も元気に泳げるくらいの水質にして河に戻すとか、そういった技術力は非常に高い。世界トップレベルの技術ではないかと思います。

また、安全・衛生に対する取り組みも盛んです。たとえば、「工場における事故をゼロにする」という目標があるとすれば、自分たちはなにをしたらいいのかを一人ひとりが真剣に考えて、みんなで繰り返し確認しながら、たとえば朝礼で確認しながら、目標達成に向かっていく。そうした取り組みは非常にすばらしいと思います。

一方で、少し足りないと思われるところもあります。CSRでいえば、外国の企業と較べると方針が確立されていないところが多いように思います。たとえば、人権に配慮します、いい職場をつくりますといった理念やビジョンはあるのですが、では、人権への配慮をどういった方針で実現するのかについては、明確に定められていないことが多いのです。

方針というのは、「~はします。~はしません。」という具合に、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を具体的に明示する必要があります。日本企業の場合、「うちにはこういう方針があります」と謳っているけれども、「それは理念ではないの」と思うような例が非常に多いのですね。

日本国内であれば、理念だけでもなんとなく通じるところがあるかもしれませんが、海外で活動する場合には、方針がなければ具体的に伝えることができません。方針がなければ、なにかが起こったら火を消していくという対処療法になりがちです。グローバルなビジネスの現場では、「書いていないのだからOKではないか」「禁止されていないことはやってもいい」と捉えられるケースもありますから、理念だけでなく、具体的にどう行動するかという方針が求められるのですね。

経営層の自覚が大切

先進企業のなかでは、経営層が自らCSR活動を引っ張っているところが多いと思います。近年では、専任にしろ兼任にしろ、CSR担当が配置されている会社が多くなっていますが、会社組織は非常に大きくて重たいですから、経営層にCSRが重要なのだという意識がなければ担当部署としても動きづらいですよね。

では、いかにして経営層の理解を得ていくか。彼らがいちばん耳を傾けるのは、社内外のいわゆるステークホルダーの声なのですね。たとえば工場であれば、「騒音がうるさい」「工場からの廃液が問題になっています」と住民がいってきていますと伝えれば、経営層も動かざるを得ないでしょう。極端な例ですが、仕入れている原料に環境を破壊してつくられた木材があって、使い続ければ、さまざまな団体や組織から圧力を受けて取引先を失うリスクがあるとか、隣の会社のほうが給料がよいので賃上げしないとみんな辞めてしまいますよとか。そういったステークホルダーの意見を経営層に届けることがいちばんよいと思います。

アジアでもSNSなどのソーシャルメディアが発達しています。いまや電気が通っていない地域に住んでいる人びとも端末を持っていますから、一人ひとりがメディアになります。ステークホルダーの声を聞く機会も増えるでしょうし、ますます重要になってくると思います。

プロフィール

赤羽真紀子(あかばね・まきこ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱銀行に総合職として入行。退職後、早稲田大学教育学部理学科生物学専修に学士入学。 米国カリフォルニア大学リバーサイド校大学院生物学科、タフツ大学大学院動物公共福祉学科で学ぶ。 帰国後、スターバックス コーヒー ジャパンを経て、米国セールスフォース・ドットコム日本法人における社会貢献部立ち上げの成果が認められ、アジア・パシフィックの社会貢献部門統括に就任。 その後、日興アセットマネジメントの初代CSR室長を務めた。 現在は「CSRアジア」日本事務所代表として活躍している。

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