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ゲストインタビュー#007 (後篇)

ゲストインタビュー#007(前篇)渡辺大樹さん EKMATTRA(エクマットラ)顧問 バングラデシュの問題は、バングラデシュの人の手で。

バングラデシュでストリートチルドレンの支援・啓発活動を行うエクマットラ。念願の職業訓練施設が2014年に完成するが、その建設資金約3,000万円をいかに 調達したのか――子どもたちの未来を拓くかれらのエクマットラのチャレンジは まだまだ続く。

バングラデシュの人びとを巻き込む

私たちはバングラデシュで人を巻き込むという方針で活動をはじめました。誤解を恐れずにいうと、バングラ人からお金を引き出すよりも日本からお金を持ってくるほうが楽というか、金額の桁も違います。でも、それをやってしまうと目的がブレてしまう。最初は苦しくても、バングラ人を巻き込んでいくしかないということで、子どもたちの里親を募っていきました。

とはいえ、簡単にはいきません。社長さんを訪ね、「こういう活動していますので里親になってください」とお願いしても、「おまえ日本人だろう。日本人に頭を下げたら10倍、20倍のお金が簡単に集まるのに、何でオレのところにくるんだ。オレはバングラ人で貧しいんだ」という答えが返ってくる。そこで、「あなたは貧しくない。日本のお金持ちよりお金持ちですよ」って返すと、「通常こうした活動は、まず外国からの援助を確保してやっていくものだ。提案書をつくって日本に持っていきなさい。日本からお金が来たら手伝おう」といわれる。これがやっぱり問題で、「こういう人たちを変えていかないと、この国は変わらない」ということを痛感していました。

半年ほどたった頃、「ダッカ大学の学生たちがおもしろい活動をはじめた」みたいな感じで、現地の新聞が取り上げてくれたんです。記事のお蔭で、「外国の援助に頼るのではなく、自分たちのイニシアチブでやる活動を探していた」と賛同してくれる現地の人たちから電話がかかってきて、里親になっていただいたり、寄付をいただいたりするようになりました。踏ん張ったことで訪れた、ひとつのターニングポイントだったと思います。

社会問題をエンタテインメントに結びつける

エクマットラのコンセプトのひとつが啓発で、映画製作をいちばんの柱に置いていますが、映画に限らず、いろいろなプログラムを実施しています。たとえば、裕福層の子どもたちとストリートチルドレンたちを交流させ、お互いに発表をさせるんです。そうすると、裕福層の子どもたちよりもストリートチルドレンのほうが歌がうまかったり、演劇的な表現力が豊かだったりすると、裕福層の子どもたちは「なんで路上のやつらが自分たちよりもうまいんだ?」と悔やしがる。そのショックを通じて、ストリートチルドレンに対して平等というか、対等な目線を持つようになるんです。

彼らは、20年後には企業の幹部になっていたり、政府の要職に就いていたりするわけですが、子ども時代にそうした経験を持つのと持たないのでは、仕事に向き合う姿勢も変わってくると思っています。

エクマットラの映像部門の指揮を執るのが、エクマットラの代表であるシュボシシロイ(シュボ)。彼は小さい頃から子役として映画に出演していて、国民賞も受賞した俳優です。その彼が大学に進み、この国の問題を人びとに訴える映画をつくりたいと、少数民族の映画を自費でつくったりしていました。

映画はバングラデシュでも最大の娯楽で、多くの人を啓発するには欠かせないメディアです。『アリ地獄のような街』の監督はシュボで、脚本も配役もすべて手掛けました。バングラデシュでは1万5,000人くらいの人が見てくれて、日本ではユナイテッド・ピープルの関根健次さんが配給を担当してくれて、約100か所で自主上映会が開催されました。初めての映画でしたが、少しは黒字が出てアカデミーの建設資金にも充てられています。『アリ地獄のような街』は娯楽性のないシリアスな映画でしたが、今後は娯楽性を持たせ、ふつうにみんなが見に来てくれながら、「ちょっとヤバイ問題だ」って気づいてもらえるような映画をつくりたいと思っています。

「問題意識0」を1にすることが重要で、シリアスな問題から生まれるのは暗い顔ばかりですけど、そこから笑顔にもっていく、共感にもっていく手段として映画がある。社会問題をエンタテインメントに結びつけることがすごく重要なんだと思います。日本でも、NGOの集まりとかいつも同じメンツだったりするじゃないですか。こういう映画、エンタテインメントなら、まったく関心がなかった人たちに強く訴えられるところが大きな強みです。映画を見終わった観客が「どうすればいいんだ?」って思っていたら、「青空教室来てよ」「うちのレストランにかかわってください」とか、自分たちの活動にすぐに巻き込めるんです。

メディア関連など、技術教育を提供するアカデミー

貧困層の子どもたちをエンパワーする活動としては、青空教室が第1のステップで、シェルターホームが第2ステップ、そして第3ステップがアカデミーで、いま建設中のアカデミーは2014年に開校式を予定しています。アカデミーは全寮制の職業訓練、技術訓練施設という位置づけで、子どもたちは通常の学校教育、地域の学校教育を受け、帰ってきた後にアカデミーで技術教育を受けます。

いまセンターにいる子どもたちと、パートナー団体の推薦によって来る子どもたちに加えて、地域のなかで貧困にあえいでいる子どもたち、親と死別している子どもたちにターゲットを絞り、40人から50人の入所でスタートする予定です。年に20人から30人くらい増やしていって、最大収容人数の160人までが生活していくかたちをめざしています。

アカデミーの教育においてもっとも力を入れるのがメディア教育で、映像、照明、音響、編集などを学び、テレビ局などに就職できるような人材を育てていきたいと考えています。バングラデシュではテレビ局が雨後の筍のようにできていて、この4、5年で20社くらい開局しています。人材が足りず、素人目で見てもあんまりうまくないんじゃないかっていう編集さんが3社掛け持ちで、昼夜問わず仕事をしていたりする。給料の水準も縫製工場よりもずっといいですし、工場では一人ひとりの特性は生かしにくいですが、映像関係なら自分の名前で仕事ができるようになっていく。

子どもたちがどんな仕事につくかは自由ですが、私たちとしては、できれば人前に出るような仕事をやってほしいと思っています。たとえばアナウンサーとしてテレビに出れば、「あの子は昔路上にいた子なんだ」っていうところから啓発が進んでいくかもしれない。実例をもって啓発していくというのが私たちのやり方。今後映像事業を発展させていくなかで、将来的には、私たちも卒業生といっしょに仕事がしたいという気持ちもあります。

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