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ゲストインタビュー #005 (後篇)

ゲストインタビュー#005(後篇)
橋本淳司さん これからの水問題の考え方。社会のあり方。

日本から世界へ。そしてまた日本へ。内外の水問題を取材し、学校での体験型授業や講演、出版などを通じて持続的な水利用のあり方を訴える橋本淳司さん。水との出会い、いま注目する水の問題、これからの社会のイメージについておうかがいしました。

社会のあり方のイメージ。川から水がめへ

子どもたちに話をするときも、危機をあおるようなことはよくないと思っています。エネルギーが枯渇するからこういう風にするとか、水が不足するからこういうふうにしていくんだっていうように危機を前提にしてしまうと、前向きな解決方法が生まれにくくなってしまう。僕も、興味を引きたいがために必要以上に危機感を煽っていた時期がありました。でも、それって社会にとってはよくないのではないか。

未来への共通イメージはすごく大事だと感じていて、新しいイメージを持ってもらうために、僕はある絵をみんなに配っています。いろいろな人が、さまざまな未来の社会像を模索していますが、僕のイメージでは小規模で自立した社会がいい。小規模・分散型で、みんなの見える範囲内で、水や食料、エネルギーを使っていく。かといって、一つひとつの社会が閉ざされているわけではなく、たとえばネットワークでつながっていくようなイメージ。

小麦をたくさんつくるので「世界のパンかご」といわれるオガララ帯水層(米国)から汲み上げられた水は、地球の海水面を1ミリ上昇させた、といわれます。こんなことからも、人間社会は「陸の水を海へ早く流す」ことに一生懸命だったな、と。地下水、河川水を使って下水として海へ流す、雨水は使わずに下水として海へ流す、などなど。でも、これからは「陸の水をなるべく陸にとどめる」「陸の水をなるべくゆっくり流す」ことに一生懸命になる必要があるな、と。それぞれの地域のなかには、水を管理できる人がいて、雨水活用であったり、冬に田んぼに水を入れて地下水涵養するとか、荒れてしまった森に光を入れて保水力を高めたりする。そういった技術を伝えていきたいというか、そういう技術が次世代にも継承されるようなことをやっていきたい。

いままでは、水の消費者とかエネルギーの消費者とか、消費する側の視点がすごく多かった。都市の人はよけいそうだと思います。そういう人たちが生産側を知るというか、エネルギーはどういう風にできているのか、水はどういう経路で流れてくるのか、食べ物はどのように届くのかっていうことを知る。それが第一段階だと思っています。次に、水やエネルギー、食べ物の生産に携わる人が少しずつ増えていけばいい。

原発でも水でも、「安全なものを寄こせ」というのは簡単ですが、文句をいうだけでは行き詰まってしまいます。エネルギーを使わずに水をつくる方法はたくさんありますし、自律的にエネルギーをつくっていく方法もあります。自分たちでやれることはたくさんあるのだから、それぞれがどういう暮らし方をするかという選択の問題なのですね。そうした選択を積み重ね、新しい社会は自分たちでつくっていこうというのが、これからのあり方なのかなと思います。

ライバルの語源はリバーに関係があって、たどっていくと「同じ水を使っている人たち」という意味なんです。でも僕は、川の上下というのはもはや古い考え方で、これからはライバルの時代からベースンの時代になると思っている。ベースンというのは「水がめ」という意味ですが、食べ物でもエネルギーでも水でも、同じ水がめのなかでいろんなことを賄えるような社会がこれからの基本になると思っています。

プロフィール

橋本淳司

1967年、群馬県館林市生まれ。学習院大学卒業後、出版社勤務を経て現職。国内外の水問題とその解決方法を取材し、新聞・雑誌・インターネット・書籍などで発信、政策提言などを行っている。また、子どもたちや一般市民を対象とした水の講演活動も行っている。NPO法人地域水道支援センター理事、東京学芸大学客員准教授、参議院第一特別調査室調査員(水問題担当)。主な著書に『67億人の水 争奪から持続可能へ』(日本経済新聞出版社) 、『水は誰のものか 水循環をとりまく自治体の課題』(イマジン出版)、『世界と日本の水問題』(文研出版)/『「放射能汚染水」「水不足」「水道停止」安全な水はどう確保する?』(主婦の友社)などがある。

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