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ゲストインタビュー #004 (後篇)

ゲストインタビュー#004(後篇)
安藤 哲也さんNPO法人Fathering Japanファウンダー/副代表 子どもたちを自立させることが父親の仕事

「笑っている父親が社会を変える」を事業理念に、父親育児のノウハウを伝える「ファザーリング・スクール」、育児休暇取得を推進する「さんきゅーパパ」、被災地で困っているパパを救う「パパエイド募金」など、ユニークな活動を続けるNPO法人のファザーリング・ジャパン(FJ)。5年務めた代表を降り、副代表として新たな事業に意欲を燃やす安藤哲也パパにお話をうかがいました。

「イクメン」から、地域とつながる「イキメン」に、介護に参加する「ケアメン」に

僕の場合、PTAをやっていても仕事で培ったネットワークや能力が生かせることが多かった。パパたちを巻き込んでPTAのメディアを改革しましたし、そういうのはおもしろいですよね。PTAのメディアは保守的ですし、最近は個人情報の話もあるのでなかなかむずかしい。でも、僕の子どもの学校ではみんなフェイスブックでつながってます。僕は地方での講演も多いですから、運動会に行けないときなんか、パパ友が写真をアップしてくれて、「ああ、みんなやってるな」とかね(笑)。全員に確実に届けようというと従来どおりのプリントになっちゃうわけですが、実際パパたちは見ないわけですよね。自分が見るメディアでできることがあるのなら、それをできる人がやればいい。なんでもありなんだと思います。

地域とプライベートを分断させているのは個人の意識。子どもがいるからこそ地域とつながれるのだから、僕らは「子どもは地域へのパスポート」といっているんです。最近は「イクメン」じゃなくて、「地域のイキメンになろう」っていう講演もやっています。先日も群馬県の教育委員会から呼ばれて、「父親をPTAに巻き込む方法~イキメンで行こう!」っていうタイトルでお話をしてきました。PTA会長の経験なんかをお話すると、みんな目がキラ~ンとかして(笑)。クジかなんかで負けて、PTAの役員になっている人ばかりですからね。でも、「嫌だ、嫌だってやってても全然おもしろくないでしょう。もっとミッションもってやりましょう」って呼びかけたら、すごい反応でしたね。終わった後、メールもいっぱいいただきました。

たしかに手のかかることかもしれませんけど、PTAとかにかかわっていると地域とのつながりがものすごく深まっていく。子育てが50代で終わったとしても、80くらいまで生きるとすると、30年くらいは奥さんと、地域と暮らしていかなければいけない。いまの若い人たちって、そこのところを全然考えていない。30代だったら、親の介護すら考えてないでしょう。僕は去年父親を亡くしました。要介護が6年間で、僕も2歳児を連れて父親の介護に行ったりしましたが、日本は晩婚・晩産化の社会で、これからはそういうことが当たり前になっていく。都会では、40代で初めて子どもを持つ男性が珍しくありませんが、その年代だと、何年後かに親が倒れたりすることも多いでしょう。そのときに「どうすんの?」という話ですよね。

親の介護を奥さんだけにやらせるのは最悪ですから、男性もできたほうがいい。介護するメンズを指す「ケアメン」という言葉もあります。「イクメン」は「ケアメン」になりやすいんですよね。育児と介護は、やることはほとんど同じですから。実際30%の男性が介護をやっていますし、企業にとっても介護休暇の問題が大きくなってきますので、仕事と育児だけではなく、仕事と介護のバランスが求められてくる。そのときに、男性が全然家事をやっていないと、非常にハードルが高い。「イクメン」でおむつを換えたり、ご飯をつくれるようになっていたほうが親の介護でも楽ですよね。

日本にもNPOとドネーション文化を根付かせたい

僕がヒルズ族だった頃は「ヒルズ族になりたい」という若者が多かったのに、いまはほとんどいない。その一方で、病児保育問題の解決をめざすNPOとかがロールモデルになっている。でも、就職先としてNPOを選んでしまうのはちょっと早計な気がします。FJにもインターンの学生さんがたくさんいますけど、いきなり「FJに就職したい」といわれても、「それはちょっと違うんじゃない」って思いますよね。

やはり経験や知恵、ネットワークが必要ですし、自分が一社会人として数年生きて、あるいは親だったら子育てをしてみて、そこになにか、どうしようもない課題、構造的な問題があるというのであれば、それをなんとかしようと思ってからやればいい。先生でも、大学を卒業してすぐ先生になると視野が狭いといわれたりしますが、一度は社会で揉まれて、いろいろな経験をして、失敗でも喜びでも、たくさん味わっている人のほうが社会事業に向いていると思います。

それに絡んでいうと、日本にもドネーションの文化、寄付の文化と仕組みがあれば、NPOが成立する基盤も広がりますし、若い人でもビギナーズラックでうまくいくといった可能性が高まる。でも現実には、行き詰まることも多いですし、なかなか広がっていかない。いろいろなタイプのNPOがあっていいと思いますし、海外のようにドカ~ンと、たとえばビル・ゲイツが50億くれるとかっていうようなドネーション文化が日本にもどんどん出てくるといいなと思います。

教会があれば、小さい頃からバザーをやったりしてボランティア教育を受けるわけですが、日本にはそれがありません。でも、家庭でパパやママがやっていれば、子どもたちにも自然と身につくでしょう。僕も先日、6年生になった息子を気仙沼に連れて行きました。なにもいわずにただ現実を見せただけですが、帰ってきてから家事とかを手伝ってくれるようになりました(笑)。

日本にはもっともっと成功したNPOのロールモデルや教育が必要です。街頭募金をしたけれど、なんの役に立つのか分からないということではなくて、自分の寄付によってだれだれが笑顔になっているとか、具体的な成果を「見える化」しなければいけない。それによってソーシャルなモチベーションも上がりますし、NPOに関心を持ったり、活動をしたいという人も増えていく。そうしたポジティブな循環をつくっていくことが大事ですよね。

プロフィール

安藤 哲也

1962年、東京生まれ。NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)理事。出版社、書店、IT企業などの職を経て、2006年に父親支援のNPOであるFJを設立。「パパ’s絵本プロジェクト」メンバー、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム座長、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員、子育て応援とうきょう会議実行委員、にっぽん子育て応援団団長なども務めている。

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