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ゲストインタビュー#004(後篇)
安藤 哲也さんNPO法人Fathering Japanファウンダー/副代表 子どもたちを自立させることが父親の仕事

「笑っている父親が社会を変える」を事業理念に、父親育児のノウハウを伝える「ファザーリング・スクール」、育児休暇取得を推進する「さんきゅーパパ」、被災地で困っているパパを救う「パパエイド募金」など、ユニークな活動を続けるNPO法人のファザーリング・ジャパン(FJ)。5年務めた代表を降り、副代表として新たな事業に意欲を燃やす安藤哲也パパにお話をうかがいました。

施設の子どもたちの自立をサポートするタイガーマスク基金

この7月から本格的に取り組んでいるのがタイガーマスク基金のNPO法人化です。タイガーマスク基金の設立は昨年3月で、すでにみなさんからいただいた寄付金を、施設を退所する子どもたちや自立援助ホームに分配しています。

児童養護施設にいる子どもたちは18歳になると施設を出なければいけないわけですが、大学の進学率が13%程度という数字からも分かるように、その後の自立が非常にむずかしい。大学に入っても卒業する子は非常に少ないですし、就職しても、虐待を受けている子どもたちも多く、大人に叱られると昔の出来事がフラッシュバックして仕事がつづかなくなるといった事例もたくさんあります。そういう状況をなんとかしたい、そのために、いろいろな組織と連携して支援を展開してくプラットフォームをつくりたいというのがNPO法人化の理由です。

かわいそうだからお金をあげようということではなくて、受けた傷や厳しい現実はあるけれども、人生っておもしろいんだぜってことを子どもたちに伝えたい。コンセプトは映画の『ブルース・ブラザーズ』。孤児院育ちの兄弟が、孤児院の窮状を知り、バンド組んで稼いだお金で孤児院を救うというストーリーがタイガーマスク基金の原点。子どもを自立させるのが父親の仕事ですから、自分の子どもだけではなくて、施設の子どもたちの自立もサポートしようということですね。

僕らは「タイガーマスク」をずっと見てきた世代ですし、僕自身寅年生まれで(笑)。「タイガーマスク」の原作者である故梶原一騎さんのご夫人と、漫画家の故辻なおきさんのご夫人に出会って意気投合し、発起人になっていただきました。昨年3月1日の記者会見が新聞やテレビで取り上げられ、あっという間に200~300万円集まったのですが、東日本大震災が起こってぱたっと止まってしまった。個人はダメだということで、企業に声を掛けたところ、あるコンビニチェーンがドリンクやおにぎりなど、「タイガーマスク」のマークを付けた商品の売上の2%を寄付するというスキームを組んでくれました。

それから、もう終了しましたが、「テレカ・プロジェクト」もやりました。テレカって、僕らはもう使わないじゃないですか。でも、施設の子どもたちはほとんど携帯電話を持っていませんから、外部との連絡はほとんど公衆電話なんですね。夕食後に電話の前に行列ができるという話も聞きましたので、「家庭や企業で眠っているテレカを子どもたちのために寄付してくれませんか」と発信したところ、全国から6万枚くらい送られてきて、事務所がいっぱいになっちゃいました(笑)。

タイガーマスク基金の発起人は「タイガーマスク」原作者・梶原一騎氏夫人の高森篤子さんと漫画家・辻なおき氏夫人の辻芙美子さん

父親の育児参加は児童虐待防止に役立つ

たとえばいま、全国に580か所の施設がありますが、虐待が増えているので数が足りないのです。しかし、新しい施設をつくろうとすると、少年院のようなイメージを持っている地域住民が反対する。退所する子どもたちの自立が困難だという現実に加えて、施設に対する誤解もあるわけですが、施設や福祉にかかわる人たちが声を上げてもなかなか伝わらない。

ですから、僕らみたいなNPOがこういう問題をアナウンスしていくことは非常に重要だと思うんですよね。NPOを正式に立ち上げたら得意な空中戦をやっていこうと。千葉ロッテの今江敏晃選手との対談がファザーリング・ジャパン(FJ)のホームページに載っていますが、彼はシーズンオフに野球教室やったり、サンタになってクリスマスにプレゼントしたり、養護施設の支援を続けている。今後も、いろいろな有名人と組んで、この問題をどんどん広めていきたいと思っています。

これまでも、オレンジリボン運動(子ども虐待防止)と連携して児童虐待防止の啓発にも取り組んできたのですが、それもさらに広げていきたいですね。世間的には虐待=母親がやることと認知されていて、実際に6割は実母によるものですが、2割は実父や養父によるものなんです。父親の女の子に対する性的虐待も非常に増えていますが、そういうことはまったく伝わっていない。

オレンジリボンのサイトには虐待の現状が載っていますが、虐待が増えるということは社会的養護が必要な子どもが増えるということですから、施設や相談所といったインフラがこれまで以上に必要になります。それらをまかなうにはばく大な税金が必要になりますが、そうした余裕は政府にも自治体にもありません。ですから、予防のための施策を講じる必要があるわけです。

父親の育児参加というのは児童虐待の予防になり得る。父親が育児を楽しんでやれば、ママも虐待に走りませんからね。そういう意味でも、今後は児童虐待防止にも力を入れていきたいと思っています。

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