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ゲストインタビュー #004 前篇)

ゲストインタビュー#004(前篇)
安藤 哲也さんNPO法人Fathering Japanファウンダー/副代表 父親が父親であることを喜ぼう

「笑っている父親が社会を変える」を事業理念に、父親育児のノウハウを伝える「ファザーリング・スクール」、育児休暇取得を推進する「さんきゅーパパ」、被災地で困っているパパを救う「パパエイド募金」など、ユニークな活動を続けるNPO法人のファザーリング・ジャパン(FJ)。5年務めた代表を降り、副代表として新たな事業に意欲を燃やす安藤哲也パパにお話をうかがいました。

ファザーリング・ジャパン(FJ)は絵本の読み聞かせから生まれた

15年前に子どもが生まれて、ごくふつうに育児や地域の活動をしていました。それで、10年くらい前からボランティアで絵本の読み聞かせをやるようになったんです。きっかけは、仕事で知りあったパパ友3人グループの飲み会で「絵本何読んでる?」という話になり、それぞれが自宅の定番絵本を持ち寄って、焼き鳥屋で絵本読みながらお酒を飲んだことです。そのときに、なにか情報発信をしようという話になって、「パパ’S絵本プロジェクト」のネーミングやコンセプト、活動内容も決まった。

ITベンチャーの社長だったパパ友がホームページをつくって、僕はメディア系の仕事をしていましたから広報をやろうと。もうひとりは絵本の編集者なので、書店さんのネットワークを利用して、僕らが「絵本ライブ」と呼ぶ読み聞かせができる場所を探そうと。それで、丸善の日本橋本店で読み聞かせをやったんですよ。新聞にその記事が載ったところすごい反響があって、全国の図書館から呼ばれたりして、あれよあれよと走り出しちゃったという感じですね。

日本では、絵本は母親が読むものという意識が根強くありますけれど、欧米ではパパたちも読みますし、絵本作家の半分が男性だとしたら、男性が読んだほうがおもしろい絵本もあるんじゃない? と考えて、パパ友3人のグループで図書館や保育園を中心に楽しくボランティア活動をやっていました。

僕らは、ナンセンスな絵本、うんちやおしっこ、おならとかの“ビロウ系絵本”(笑)や、サイエンス系やアドベンチャー系とか、母親が読まないような絵本を読むのですが、子どもたちは「こんなの見たことねえ」「バカじゃねえの」とかいいながら、よく笑ってくれる。

でも、毎回必ず一人か二人くらい、まったく笑わない子がいて、その子たちの後ろには、笑っていないお母さんと笑ってないお父さんがセットでいるってことに気が付いた。もともと笑いが薄い家庭なんだろうな、お父さんが仕事ばかりで忙しければ、お母さんは育児で大変なはずだし、子どもにとっては緊張感の高い家なんじゃないかとか。僕の家もそうだったので、非常にそれがよく分かったっていうかね。

笑わない子を笑わせるには、親がもっと自己肯定感を持って育児や仕事ができるような環境にすべきなんだろうけど、ママたちは育児でせいいっぱいですから、これからは父親が育児を楽しむような時代にしたいなと。そういう思いがファザーリング・ジャパン(FJ)の出発点です。

パパマーケットは手つかずだから間違いなく成功する

当時、男性の育児参加は世間的にはぜんぜん見えてなかった。僕らが読み聞かせを通じてメディアに出たことで、「いや実は僕も読んでるんです」「僕もぜひ仲間に入れてください」とか、ものすごく反応があったんですよ。それで、「育児に関心を持ってる男性だっているじゃん!」と確信しました。当時僕はIT企業で働いていましたが、隠れて育児をしているパパたちのニーズに応えるというか、もう少しソーシャルな活動としてできないかなと思ってFJを立ち上げたんです。

IT企業には4年半くらい在籍しましたが、最後の1年間くらいは二足のわらじでした。リーマンショックがあって、日本社会もシュリンクしていくという予感もありましたし、ただ働いていればいいって時代じゃなくなるという読みのなかで、自分が子育てにかかわった経験や絵本の話も含め、社会変革が起こせたらおもしろいなと思ったんですよね。年齢的にも40を超えて、僕は管理職でしたが、さらに上に昇ることが目標じゃないって思っていましたし、FJのほうがおもしろそうだということで、会社を辞めて活動に専念しました。

多少の不安はありましたけど、間違いなく成功するだろうと思っていましたよ。職業的な勘はそれなりにありますし、毎年50~60万人くらいの新しいパパというマーケットができるわけですからね。いままでこの領域はまったく手つかずでだれもやってなかったわけですから、「これはいただきだな」って思いました(笑)。ボランティアでやるつもりはまったくなくて、ソーシャルビジネスとしての成功の確率を自分なりに計って、ステークホルダーにきちんと説明して、会員になってもらったり、協賛してもらったり。それはふつうの株式会社がやっていることとまったく同じです。

僕らの活動が高校の家庭科の教科書に載った!!

日本では、父親というと働いて家族を養うとか、亭主関白とか雷親父っていうイメージがかなり定着しています。ところが僕らは、「長時間働くのをやめてバランスとってやろうよ」「家で笑ってるパパでいようよ」と真逆なことをいうわけですから、当然、“抵抗勢力”みたいな人たちが出てくる(笑)。「家のことはすべて母親に任せて好きなだけ仕事をすることができた。そのことによって男同士、ある種の連帯感があったのに、家事や育児をしようとかいってメディアに出られると困るんだ」って怒られました(笑)。「あの人たちはやってるのに、なんであなたはやらないの?」って奥さんからいわれちゃいますからね。

そんな彼らも、リーマンショックがターニングポイントになって、価値観が揺れてきている。子どもが大学に進んでお金がかかるというときに、「給料増えてるの?」って聞くと、威勢よかった人も口ごもるわけですよね。「本音は奥さんにも働いてほしいんじゃないの」「君も家のことやらないと回っていかないよ」というと、もう反論してこない。やはり、リーマンショックの前と後ではまったく違います。僕らのセミナーにくる男性の数が3倍から4倍になっていますし、事業の規模も違ってきましたよね。そこで軸が変わった、要するに男女の役割が従来とは変わってきたように思います。

世代的な変化もあります。いまFJの主力は30代前半になりつつありますが、彼らは平成5年に中学校の授業に家庭科が導入されたときの現役世代で、その彼らがようやくパパ世代になりつつある。

僕ら40代男性は家庭科を勉強していないのですが、そんな僕らのことが高校の家庭科の教科書に載ったんですよ。家庭科を知らない世代の男性がつくったファザーリングという活動を文部科学省が認めたというのは、僕らにしてみれば完全なるリベンジなんですよね(笑)。そんなこともあって、「もう代表辞めよう」と思いました。ほかの事業もうまくいっていますし、ファザーリングが受け入れられる社会になってきた。成果としてママたちからのウエルカムの声もすごく多いので、間違いなくストリームになってきている。ここまで持ってくるのが僕の仕事だったという感じですね。

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