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ゲストインタビュー #003 前篇)

ゲストインタビュー#003(前篇)
菅原 聡さんGLOBE PROJECT 代表 スポーツを楽しみながら社会問題を解決する

大学在学中に訪れたカンボジアでの体験をベースに、さまざまなスポーツ事業を通して社会問題の解決を図る“GLOBE PROJECT”を設立した菅原聡さん。サラリーマンとして忙しい毎日を送るかたわら、地雷問題の解決や被災地復興支援の活動をつづける菅原さんに、活動のきっかけやこれからをお聞きしました。

フットサルのコート80面分の地雷原を除去した

海外で見聞きしたような現実を伝えなければいけないと思ったのですが、日本に帰って気づいたのは、社会問題に関心を持つ人間が少ないことでした。そういう話って盛り上がらないし、暗くなる。そんな感覚だから、ボルヴィックがやった“1L for 10L”プログラムのように、「こんな問題があるんだけど、こんな解決の方法があるよ」とわかりやすく伝えないと関心を持ってくれないなと思ったわけです。

世界一周旅行のことを思い出し、そういえばカンボジアでサッカーをやった場所のすぐ隣が地雷原だったな。じゃ、その地雷を除去できたらいいかもしれない、と思いました。そして、「フットサルで地雷撤去」というアイデアがひらめいてみんなに話してみたのですが、10人中9人ぐらい「は? フットサルと地雷なんて関係ないじゃん!」みたいな(笑)。「1年間で国立競技場と同じ面積の地雷原をなくす」といっても、「そんなのできないだろ!」という感じでした。でも、10人いるとひとりぐらいが「それ、超おもしろいね!」といってくれたので、「いっしょにやろうよ」って仲間になっていきました。

地雷原の除去費用は1平方メートル当たり約1ドルです。200人規模のフットサルの大会で、ひとりあたり200~300円を参加費にプラスすれば、フットサルのコートと同じ面積のカンボジアやタイの地雷原を走りまわれる場所へ変えることができる――それが“Kick The Mine Cup”というプロジェクトで、その目的は「離れてはいるけれど、いまこのときも地雷の問題がある」「日本でサッカーを楽しめば、海の向こうでもサッカーを楽しめる場所ができる」ことに気づいてもらうことです。

プロジェクトがスタートしたのは2006年です。多くのみなさんにご協力いただいて、現在までに大体5万平方メートル、フットサルのコートなら80面弱、国立競技場5面分ぐらいの地雷原の地雷を除去することができました。はじめのうちは自分たちだけでフットサルの大会を開催していましたが、いまでは、早稲田大学体育祭の公式行事として1,000人以上の規模の大会が開催されたり、横浜市立大学や宇都宮大学でも定期的に開催されています。また、大阪に支部がつくられたり、徳島で大会が行われるようになったり、僕らが直接かかわらなくても、どんどん回っていくようなしくみづくりに取り組んでいます。

フットサル大会への参加費から得た収益を地雷除去に寄付する“KICK THE MINE CUP”を2006年から開催、これまでに地雷を撤去したエリアはフットサル用コート80面分に相当する

現地を見ることのたいせつさ、地雷のむずかしさ

GLOBE PROJECTの活動では、毎年20人くらいのメンバーを現地視察に連れていきますが、現地での経験を経て、彼らが変わっていくさまが目に見えてわかります。メンバーの半分くらいが海外は初めてだったりするので、物乞いをする人たちにお金をあげるかどうかにさえ悩んだりします。でも、現地の苛酷さを知ったり、それでも幸せそうに生きている人びとの姿を見ることでなにかを感じて、毎年メンバーのうち1人か2人は世界一周に出掛けていきます。そういう姿をみると、現地で出会う地雷の被害者やそこで生きている人たちの力強さから得るものってすごく大きいんだろうなと思います。

現地視察に行くと、自分が担当した大会によって地雷が撤去された場所を実際に見ることができます。大会の運営というのは、コーンを並べたり、レフェリーをしたり、集金をしたり、地味ですしほとんど楽しくありません。当然不平不満も出ます。でも、現地で自分の目で地雷が撤去された場所を見ることによって、小さな達成感をあじわうことができます。あとになって苦しんだり悩んだりしたときも、「あのとき自分にはこれができた」「自分の力で何か変えることができるはず」と振り返ってほしいなと思っています。

むずかしいと思うのが地雷という兵器です。カンボジアとタイの国境沿いにはプレア・ヴィヒアという古い遺跡があります。日本のJAHDS(人道目的の地雷除去支援の会)によって周辺の地雷除去が終わり、2008年に世界遺産に登録されました。ところが、タイが領有権を主張したために紛争が起こり、兵士だけではなく民間人の死者も出る状況になって、再び地雷が埋められてしまったのです。

地雷は非常にコストパフォーマンスの高い兵器です。兵士を雇うとぼう大な人件費がかかりますが、地雷なら1個何百円ですむのです。だから自分の村を守るためにも使われているのです。プレア・ヴィヒアではJAHDS の活動を引きついだPRO(タイ人による地雷除去団体)が地雷除去を再開しましたが、彼らは「ステップバイステップだよ」といっていました。一からやり直しということで、僕らも相当ショックを受けたのですが、なげいていてもはじまりませんから、「それでも地雷をなくしたい」という気持ちでいまも活動をつづけています。

プロフィール

菅原 聡

1983年生まれ。早稲田大学在学中に世界一周の旅に出る。東南アジア、中央アジア、ヨーロッパ、東欧、中東、アフリカ、アラスカなど各地のNGOや国連機関でボランティアをし、スポーツを通して社会問題を解決するGLOBE PROJECTを立ち上げる。2008年、㈱リクルート入社。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ日本の20代30代の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティに選抜される。

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