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ゲストインタビュー #002 後篇)

小暮真久さん NPO TABLE FOR TWO代表
TFTの課題とソーシャルのこれから。

カロリーを抑えたヘルシーメニューを提供することによって得られた寄付金(20円)が、給食1食分となって開発途上国の子どもたちの空腹を満たす―先進国における肥満と開発途上国における飢餓という2つの問題を、同時解決することをめざす社会貢献事業「TABLE FOR TWOプロジェクト」を推進する小暮真久さんにお話を聞きました。

社会問題の解決を政府に任せる「分業の時代」は終わった

ソーシャルの意識については、たとえば韓国などは、日本より半歩先に行っているなという感覚があります。いまの韓国の問題は格差と雇用。先進国のなかでも貧困レベルが高く、高齢者の2人にひとりが貧困状態に陥っているといわれています。グローバル市場を席捲している韓国経済、韓国企業というイメージとは裏腹に、若い人びとのあいだでは「なんとかしなければいけない」「変えなければいけない」と考える人が増えています。

日本にも教育や格差、失業率などいろいろな問題がありますが、これまではすべて政府に任せてきましたよね。社会問題というのは政府や役所が解決するもので、大多数の日本人は、とにかく経済を伸ばすというかたちで分業をしてきたわけです。しかし、特に若い人たちは「もう分業ではダメだ」ということに気づいているし、「経済を伸ばそう」といっても伸びないことは分かっている。ですから、「来年は前年比売上2倍!」といわれたところで、「ついていけないな」と思う。僕らのところでインターンやっていた学生たちも就職しましたが、仕事にやりがいを見いだせない人がたくさんいます。

企業も「利益が10億だ、100億だ」という話ではなくて、有り余るリソースをいかに社会のために使うかを考えなければ、若く優秀な人材を引き留めることはできません。社会がダメになってしまったら、企業も「利益だ」などといっていられないですよね。

ソーシャルの次のフェーズが始まっている

ソーシャルメディアが広まったことによって、“Everybody is watching you.”という感じが強くあります。ひと昔前なら、「どこそこがこんなひどいことをしている」という話は、ジャーナリストが取材しない限り報道されなかった。でもいまでは、個人がブログに書いただけで「何やっているんだ!」という時代ですよね。企業が社会問題を無視するとか取り組まないというスタンスは、もはや前提としてあり得ないと思います。

一方、企業はものすごいリソースを持っていて、アメリカ政府よりもキャッシュを持っている企業もあります。社会問題の解決には企業の力が絶対に必要だと思う。たとえばTFTに参加していただいている480社についていえば、食という部分では緩やかな連合体ができているから、そのつながりをもう一歩先に進めたい。TFTを軸に、かつては競合だった企業とのあいだで情報交換をしたり、一緒に報告会に来てくださったり、いろいろなことが起こっています。TFTでできるなら本業でもできるはずだと思っています。TFTの参加企業のなかには、世界一の太陽光発電の技術を持っている会社もあれば、世界一効率が良いクルマをつくる会社、世界一良い電池をつくる会社もあります。彼らが手を組んで、世界一環境にやさしくて素敵なクルマをつくって、アフリカの大地を走らせようと思ったら実現可能なのですよね。

いま、CSRやボランティアリズムの次のフェーズが、韓国などでも少しずつ始まっていて、日本も多分ここ5年ぐらいで一気に起こっていく気がしています。日本企業もグローバルでビジネスを展開しようとするのであれば、これまで競合と考えていた企業とも協力しなければ、1社の強みだけではグローバル市場で勝てないと思う。

若い人たちは優秀ですし、社会を良くしたいという明確な価値観を持ち合わせている。彼らが世の中のマジョリティになっていけば、本当に良い世界になる。上の世代がやらせてあげることが大事だと思う。けっこう邪魔をしている人たちがいますので(笑)。新しいものとか自分が分からないものを排除するのは人間の本性なのでしょうが、道を譲ることがあってもいいかなという気がします。

これから2、3人でやるようなソーシャルベンチャーみたいなものがタケノコのように出てきたらおもしろいし、大人たちがやるべきことは、そういうところにリソースを付けてあげることだと思います。10個のうち1個しか育たなくても、そこには学びもあるじゃないですか。「僕は2回NPO潰してます」というような若い人がでてくるような社会になれば、本当に日本の底力が生きてくると思っています。

プロフィール

小暮真久

1972年生まれ。1995年に早稲田大学理工学部卒業後、オーストラリアのスインバン工科大で人工心臓の研究に携わる。1999年に同大学修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。その後、同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年に松竹株式会社に入社し事業開発を担当。

経済学者ジェフリー・サックスとの出会いをきっかけに「TABLE FOR TWO」プロジェクトに参画。2007年NPO法人・TABLE FOR TWO Internationalを創設し、理事兼事務局長に就任。社会起業家として日本、アフリカ、米国を拠点に活動中。

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