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ゲストインタビュー #002 前篇)

小暮真久さん NPO TABLE FOR TWO代表
直感で生きてきた。そしてTFTと出会った

カロリーを抑えたヘルシーメニューを提供することによって得られた寄付金(20円)が、給食1食分となって開発途上国の子どもたちの空腹を満たす―先進国における肥満と開発途上国における飢餓という2つの問題を、同時解決することをめざす社会貢献事業「TABLE FOR TWOプロジェクト」を推進する小暮真久さんにお話を聞きました。

後押ししてくれたのはジェフリー・サックス教授と出会い

コンサルティングの仕事をしていたときに、社会起業とかソーシャルベンチャーといったものをやってみたいと考えるようになりました。そのときTABLE FOR TWO(TFT)のアイデアと出会って「これやりたい」って直感的に思ったんです。でも、やり方も分かりませんし、不透明な部分がたくさんあった。そんなとき、ニューヨークのコロンビア大学でジェフリー・サックス教授に会う機会がありました。

彼のオフィスにいってみると、壁中にいろいろな写真が貼ってあった。僕らが知っている国家元首もいれば、企業のトップもいるし、マドンナやアンジェリーナ・ジョリーのようなセレブリティと写ってる写真もあって、「何なんだ、これは!?」「この世界ってすごいな、地球司令室じゃん!」と思ったのですね(笑)。

教授の話にもすごく感動しました。初対面の若者相手に、「貧困というのは本当に解決できるんだ」「そのためには力を合わせなきゃいけなくて、特に日本というのは重要なんだよ」と情熱的に話をしてくれたのです。彼は貧困を絶対終わらせると信じ切っていますし、その裏には確固たる理論がありますから、「この人すごいな」「この人と仕事したい、何かやりたい」と思って。まあ、恋に近いようなものだと思いますが、それがジェフリー・サックス教授との出会いでした。それが強烈な後押しとなって、なにがなんでもTFTをやろう、貯金を切り崩してでもやろうと思って始めたわけです。

電通の社員食堂のTFTメニュー

飢餓と肥満をつなげるTABLE FOR TWO

TFTで僕らが解こうとしているのは、分かりやすくいえば飢餓の問題なのですが、もうひとつ、先進国における肥満の問題も解消しようとしているのです。食の配分ではグローバルな規模で不均衡が起こっていて、ある場所には過多に供給されているけれども、あるところにはまったく届いていないというねじれがあります。そのねじれを直すには、一方だけではなく、両方に取り組まなければいけない。“TWO”が大事なんです。ですから、先進国で食べ過ぎのところを少しずつカットしながら、飢餓の問題を解決するという活動をしています。

2007年にスタートしたTFTプログラムへの参加企業・団体数はいま480を超えており、日本を中心に10ヵ国に広がりつつあります。海外におけるプログラム展開はいろいろな「ご縁」がベースになっています。たとえば香港の場合は、韓国で行われた国際会議で僕の話を聞いてくれた青年が、講演後に「やらせてもらえないか」といってきてくれたのです。彼は香港でソーシャルビジネスをインキュベートしていて、僕も直感的に「この人ならいけるな」と思ったんですね(笑)。いまは50ヵ所ぐらいのレストランでプログラムを展開するまでになっています。

アメリカでは、僕の本(『「20円」で世界をつなぐ仕事』)を読んで「感銘を受けました」という日系アメリカ人が協力してくれていますし、本当に「ご縁」で広がっているという感じです。

小暮真久『20円で世界をつなぐ仕事』
(日本能率協会マネジメントセンター)

無償にも良い部分と悪い部分がある

国によっていろいろな違いはあります。イタリアや韓国では、食堂がある会社も多いのですが、外へ食事に行きたがる人も多くて、なかなか摑まえられないという状況があったりしますし、シリコンバレーでは、カフェテリアを無償で従業員に提供するのがひとつのステータスになっているので、TFTにとってはきびしい状況です。食べ放題なんでみんなガツガツ食べちゃうし(笑)。

海外に展開していくなかで感じるのは、これだけコミュニケーション手段が発達しても、フィジカルに会って話すことに勝るものはないということです。実際に行ってみるといろいろなことが分かる。「あ、やってくれてないな」とか「結果は出てないけど、頑張ってくれているな」とか。TFTには、ほとんどの人は無償でかかわってくれています。無償にも良い部分と悪い部分があって、つらいことに直面すると避けてしまうというか、やめてしまうというのが悪い部分。お金をもらっている仕事であれば、つらくてもやめるわけにはいかない。そこがボランティアでやるときのむずかしさで、やはり気持ちが大事。

協力していただく企業やレストランを見つけるときも、いちばん重要なのはハートで、相手も「この人はどこまで真剣にやるのかな」というところを見ている。ですから、僕らが送った資料を読み上げているだけではダメで、「自分たちはこうやってやりたいんだ!」という想いを伝え、同じような気持ちになってもらわないとなかなか協力先が増えていかないのですね。

プロフィール

小暮真久

1972年生まれ。1995年に早稲田大学理工学部卒業後、オーストラリアのスインバン工科大で人工心臓の研究に携わる。1999年に同大学修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。その後、同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年に松竹株式会社に入社し事業開発を担当。

経済学者ジェフリー・サックスとの出会いをきっかけに「TABLE FOR TWO」プロジェクトに参画。2007年NPO法人・TABLE FOR TWO Internationalを創設し、理事兼事務局長に就任。社会起業家として日本、アフリカ、米国を拠点に活動中。

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